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ベッドの上で泣きつかれてしまった鈴那は、壊れた人形のように身動き一つできないほど憔悴していた。
ボロボロに剥がれたメイク。部屋の乾いた空気が、追い打ちをかけるように鈴那を惨めな気持ちにさせていた。
唇を噛み締めて、やっとの思いで起き上がる。加藤が投げつけた茶封筒が床に落ちているのをつけて、それを拾い上げた。
厚みがある封筒の中を覗くと、帯封のついた札束が入っていた。
鈴那は顔をしかめ、茶封筒を右手で力強く握りながら、部屋に散らばっていた洋服を拾い集め、茶封筒をカバンに突っ込み、服を着た。
バスルームへ行き、鏡に映る自分の顔を見て、あまりのみすぼらしさに何度も顔をこすった。 もう一度鏡を見ると、そこにはマスカラが目の周りを黒く染めていて、形容しがたい形相の女がいた。あまりに滑稽で、もう涙も出てこない。
恋人として付き合っていたと思っていたのは自分だけ。しかもクビを宣告され、一気に何もなくなってしまった。
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