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「……もう泣くな。怒っちゃいねぇよ」
そっと身体を離し、彼女の涙を親指で拭ってやる。
そしてそのまま、唇を重ねた。
「……高ちゃん」
「晃紘」
「え?」
「晃紘って呼べ」
そう言うと、彼女が顔を歪め、強ばる。
わかってる。
浩明と名前が逆だから、思い出してるんだ、と。
「……俺を見ろ。
他の男なんか考えんな。
…………ゆず」
奪いたい。
その考え自体をすべて奪いたい。
俺の腕の中で他の男を思い出す失礼な柚を傷つけて、俺のものにしたい。
声を聞いたら、抱きしめたら、戻れなくなる。
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