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「高ちゃん、おめでとう」
中に入るなり、あたしはケーキの箱を差し出しておめでとうを述べる。
「何?」
「ケーキ。手作りなの。
……口に合うかはわからないけど」
「別にいらねぇって言ったじゃねぇか」
顔をしかめて彼がケーキを見ているのを見て、いたたまれなくなった。
「い、いらないなら持って帰る!」
あたしの手作り、そんなに嫌なんだ。
悲しみと苛立ちで彼からケーキの箱を奪おうと手を伸ばせば、それはあっさり高ちゃんに掴まれてしまった。
「食べたくないとは言ってない。
……これが代わりか?」
「は!?」
高ちゃんは時々意味がわからないことを言う。
首をかしげると、高ちゃんはあたしの手首を掴んだままそっぽを向いて言う。
「物はいらねぇってお前の気持ちが欲しいって言ったよな。
お前の気持ちは俺にやれない、だからケーキを受けとれってことなのかと思っただけだ。
けど、悪かった。
俺の勘違いだ」
言い切ると高ちゃんはケーキを冷蔵庫に入れに行った。
無表情だから分かりにくい。
意外と彼はヤキモチ妬きなのかもしれない。
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