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「はいよ」
「ありがと。いただきます」
コトン、と彼があたしの目の前に置いてくれたのは、コーヒー。
熱々の湯気と、ほんのり苦い香り。
普段はぶっきらぼうだけれど、こんなとき暖かいななんて思う。
「わりぃな、さっき。
ダメだ、俺。余裕ねぇんだよな」
「ううん、大丈夫。平気だよ」
意外とヤキモチ妬きだってわかったからには特に気にしない。
けれどあたしが笑顔で言っても、高ちゃんの表情は晴れない。
「高ちゃんは、もう少し表情に出したら分かりやすいよ。
無表情でこーんな顔だからあたしに伝わらないもん」
こーんな顔、とあたしが顔を寄せると高ちゃんは吹き出した。
「そんな顔か、俺」
「うん」
無表情だからかな。
たまに見せるこういう笑顔があたしを魅了する。
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