プロローグ

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「ダハハ! ま~た落ちやがったのか!」 ほとんど客のいない、閑古鳥が泣く、鳴くじゃなくて淋しさで泣くレベルのがらんとした喫茶店に豪快な笑い声が響く。 ほんとにこの女だけは、人の不幸をオカズに飯が食えるんじゃね~かってくらい爆笑しやがって…… 誰かに聞かれたら恥ずかしい、と思ったが、それを聞く客すらもいないような喫茶店である。 マスターこだわりのテーブルや椅子などは綺麗に磨きあげられ、自家焙煎で入れるコーヒーはそんじょそこらのチェーン店では出せないような深みのある味わい。 しかし、その木製の丸テーブルに座るのは、今のところ、オレとこのデリカシーのかけらもないこの女だけである。 こんな100%味音痴な暴力女に飲まれるコーヒーが不憫で仕方がない。 ほんと、ブラジルの方々に謝れ! 「あ? んだその目はよ」 そしてこのように自分が何かしら悪いように言われていたら何メートルさきでも、心の中であろうと読み取りやがる…… なんなのこのへんてこな能力。 マジで神様この人に最適な才能与えすぎ…… 「まあいいや。だがよレッド、就活の面接で今のバイトがヒーローですはね~だろ。 お前は芸人にでもなりて~のか」 「芸人になりたかったらそんなつまらないこと言うかよ……」 ちげーねぇ、なんて言ってコップに残ったコーヒーを一気飲み。 もったいない、もっと味わって飲めばいいのに。
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