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サクラの冷蔵庫への侵略を見守っていると、ただいま戻りました、なんて悠長な声でマスターが戻ってきた。
マスターはスーパーで買ってきたであろう袋をカウンターに置くと、異常はありませんか? なんてオレに質問してきた。
なんなら異常しかありませんけどね。見ていただいたら分かりますけど、サクラのせいで冷蔵庫は壊滅状態ですよ。
とか言えないオレは、ちょうど背中を向けていたサクラを指差した。
マスターは少し困ったように顔を伏せたが、依然笑顔のままでサクラを見つめている。
ほんとにこの人は常に笑顔を絶やさない人だ。実はオレをこのバイトに誘ったのはマスターだったんだが、この優しい雰囲気に騙されてしまったのは言うまでもない。
今では後悔しかない。
「ピンクさん困りますよ、商品に手をだされては。お客様におだしできなくなってしまいます」
と、どこまでも腰の低いマスターにピンクことサクラは、
「は? 客なんて私達以外にいねぇんだから別にいいだろ」
とか宣いやがる。言われた側のマスターも苦笑を浮かべるだけで何も言い返さない。
こんなだからナメられるんですよマスター。というよりもサクラはちゃんと金払ってから客扱いを求めなさい。なんて、常にこの喫茶店の賄いで腹を満たしているオレが言ってもなんら説得力がないので、口には出せないんだが。
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