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この腕を動かしてもいいのだろうか。
自分の腕なのに、そんなこと思った。
抱きつかれた。「愛してる」と言ってくれた。
いつもなら優しく包み込んで、もっとドロドロに甘やかしていただろう。
けれど、戸惑ってしまった。
今になって、自分のしたことが自分に返ってきたようで。
こんな汚れた手で、コイツを触っていいのだろうか、と。
でも、これがチャンスだと言うのなら…。
そっと抱きしめる。いつも通り優しく。思いきり抱きしめたら、壊れてしまいそうだから。
また泣き出したアイツに戸惑うけれど、やっぱり手放したくないと欲が出る。でも、と自分との葛藤。
耐えきれず、アイツの肩に顔を埋めた。
懺悔をするように、告げた。俺は裏切っていたんだと。お前は許せるとかと。
どう答えてほしいのか、自分でも分からなかった。
自分なら許せない。コイツがもし誰かと浮気なんてしていたら、相手もコイツもただじゃ済まさないだろう。けれど…。
あぁやっぱり俺はズルイ男だ。そして、なにより滑稽だ。
自分は許してほしいだなんて、なんて都合のいい。
答えが怖くて、腕に力が籠る。最後なら、思いきり…、と。
けれど、アイツは言った。
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