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「どんな貴方でも、僕はもう離れられない。それくらい愛しています。」
どんなに嬉しかったか。泣き叫びたい程、今なら信じていなかった神に感謝できる。
震える吐息に声を乗せて、名前を呼んだ。
あぁ久し振りに声に出した。いつも、いつだって呼びたくて、でも呼べなかった、愛しい名前。
呼べば、ところ構わず言ってしまいそうだった。
俺を「好き」だと言えと、強要してしまいそうだった。
そんなものに意味はないと知っているのに。
こうして呼べることがこんなに幸せだなんて。
そっと顔を上げたアイツ。その口から俺の名前が紡がれる。
自分の名前なのに、コイツが呼ぶとそれすら愛しくなる。
ゆっくりと顔を寄せる。少し背伸びをして応えるアイツ。目を閉じた顔。
すべてが愛しくて、意味もなく叫びだしそうだった。
優しく口付けたそれは、今までよりも甘かった。
数秒のキス。ゆっくり離れると、照れくさそうに笑うアイツ。
初めて見た、心からの笑顔。体が沸騰するように熱くなった。
顔を覆って、しゃがみ込む。こんな破壊力があるなんて、知らなかったぞ。
驚いたように、不思議そうに覗きこむアイツの腕をとり、早足で歩き出す。
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