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戸惑いながら俺に引っ張られるままのアイツを横目で見て、視線を前に戻した。
「今すぐ抱きたい。お前が、今すぐ欲しい。」
ガキだと、笑われる。盛りのついた猿か、なんて自分で突っ込みながら、でも足は止まらなかった。
家から近い場所でよかったなんて思いつつ、一人暮らしのマンションにアイツを連れ込む。
玄関を入ってすぐに振り返り、扉に押しつけるようにしてキスをした。
もう一秒も待てなかった。余すことなく、コイツを愛したい。体の奥底まで。
けれど、キスの合間に「待って」と言われ、ようやく気付いた。
やはり汚れた俺に抱かれるのなんて、嫌かもしれない、と。
暴走していた頭が冷静さを取り戻し、距離を置く。
「ごめん」と謝る俺に慌ててアイツは否定した。
「えっと、あの、僕でいいんだよね?僕、だけ?」
酷く不安そうに聞かれて、自分を殴ってやりたくなった。
何をしているんだ。俺は返事をしていないじゃないか。まぁとっくの昔から返事なんて、決まっているのだけれど。
そしてふと気付く。アイツの敬語がなくなっていることに。
これは…、とみっともなく顔がデレたのが自分でも分かった。
「お前だけだ。お前しかいらない。愛してるよ。」
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