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俺はこれを手放せるのか?いや、無理だ。コイツがそばにいないだなんて…。
俺はきっとそんな世界では生きては行けないとすら、思えるくらいに。
困らせたいわけじゃない。できるなら心からの笑顔を、見てみたい。
そう思うのに、口からでるのはアイツを困らせるような言葉ばかりだ。
「お前がいないと幸せになんかなれない。俺を愛して。そしたら俺は幸せになれる。」
違う。違う。本当はそばにいられるだけで幸せだったんだ。
いつからか、欲がでてしまった。同じ気持ちを返してほしい。だなんて。
お願い。俺を置いていかないで。お前がいないと息苦しくて堪らないんだ。
お前の分も俺が、愛すから。だから、側にいて…。
ギュっと抱きしめていた腕を少し緩めて、アイツの顔を見る。
そして、また後悔した。アイツの顔が泣きそうに歪んでいたから。
困ったように笑う顔以外も見てみたかった。けれど、決して泣かしたかったわじゃないんだ。俺は…。
なんの謝罪かは分からない。けれど自然と口から零れた「ごめん」の3文字。
そっと腕を離して、アイツを手放す。ごめん、苦しませてばかりで。押しつけてばかりで。
もう、解放してあげるから。ホント、ごめん…。愛してるから、さよならだ。
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