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だからどうか、どうか側にいさせて…。
必死に紡いだ言葉にも彼の反応はなく、ただ立ち尽くしていた。
あぁダメなのか。そう思いそっと離れようとすると、彼の腕が僕を包み込んだ。
それだけで、胸が押しつぶされそうなくらいに歓喜した。
どこまでも優しく包み込んでくれる貴方の腕で、僕はまた涙を流した。
優しく包み込む彼の腕に力が籠って、顔を上げようとすると、貴方は僕の肩に額をつけ、苦しそうに呟いた。
「俺はお前を裏切っていた。そんな俺でも、許されるのか?」
まだお前に想ってもらえる資格はあるだろうか?
後悔に塗れた声色に、僕のほうが苦しくなった。
貴方は悪くない。僕がきちんと貴方の向き合わなかったから、貴方に辛い思いをさせてしまったんだから。
それに…。
「どんな貴方でも、僕はもう離れられない。それくらい愛しています。」
そう。きっとまた貴方が他の人に走ってしまっても。僕は辛いだろう。けれど、それでも僕は貴方を手放せない。
それくらい、貴方を愛している。
もうこれは依存だ。貴方なしの世界で、僕は生きられない。
そう気付いてしまったから。
苦しくらいに抱きしめられた。こんなにキツク抱きしめられたのは、初めてかもしれない。
それがまた、幸せだ。
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