第六夜 「桜が舞う」

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「さのちゃ、あーんっ!」 目の前に出された食べ差しの団子をどうすべきか考えあぐねる原田。 しかし、沙夜は食べるのを待っている。 自分が団子を食べたかったと勘違いしたのだろう、と思い、沙夜の優しさを無下には出来ないと1口食べる。 「んまい。 ありがとな、沙夜。」 そう言うと沙夜は花が咲いたように笑った。 春は沢山の花を芽吹かすが、こんな可愛い花まで咲かすんだな、と原田も笑った。 薄桃が視界に流れ落ちる。 沙夜が桜を掴もうとしていた気持ちが分かる気がして、原田も桜に手を伸ばした。 桜を見ていると沙夜も静かに団子を食べている気配がした。 別段話し掛けられても良かったのだが、と沙夜を見ると、丁度今舞い落ちた桜の花弁が沙夜の頭にひっかかった。 「沙夜、頭に花弁ついてる。」 言って原田が取ってあげると沙夜は目を輝かせた。 「さのちゃ! 幸せになれるかな?」 あれ、花弁どっちのだろう と原田が取った桜の花弁をしっかりと握り沙夜は祈りのポーズをした。 桜の花弁掴むと願いが叶うとか様々な噂があるのは知っていた。 やれ恋が叶うだとか、やれ幸せになれるだとか。 しかし、実際に掴むと本当だ、幸せになった。 原田は沙夜の祈りを見ながら幸せ気な優しい笑顔を浮かべた。  
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