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「そーちゃんは美人だよ!」
無邪気に笑う沙夜の瞳には先程の冷めた目は影もない。
こんな無邪気に笑う沙夜が、あんな表情をするなど、例え先程の目を見ていても気の所為にするだろう。
沖田もその1人で、沙夜の言葉に咽て涙目になっている。
「そ、そうかなぁ?
沙夜ちゃんも大人になれば美人になりますよ。」
普段なら、あまり嬉しくない言葉に理不尽に怒りそうになるのを堪え、なんとか笑みを作る。
沖田自身気付いているが、頬が引き攣って情けない表情になっている。
落ち着く為にお茶で喉を慣らし、1息吐く。
団子は最後の1個だったらしく、串だけ皿に置かれていた。
沖田が落ち着いたのを見計らって、沙夜が口を開く。
2つ残った団子を皿に置き、沖田を見据える。
大人びた表情と子供の無邪気な笑み、どちらが本性か、なんて考えたくもないが、出来れば後者であって欲しいと思いながら向き合う。
何か、背徳を犯すような罪悪感が背筋から這ってくる気がした。
それを呑み込み頭から流し、沖田はやっとの思いで声を出す。
「何を…ですか?」
「そーちゃんが沙夜を疑ってるの。」
瞬間頭痛がした。
間髪入れずに返す沙夜は、本当に子供か。
たじろぐも、取り繕う為に言葉を紡ぐ。
「何の事ですか?」
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