第三夜 「始まり」

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「総司は芹沢さんと仲が良いからなぁ。」 近藤は、厳つい顔を少し綻ばせ、うんうん頷いている。 それを見て、土方は立ち上がった。 思い立ったら直ぐ行動に移すようだ。 「では土方君、頼みましたよ。」 山南は眼鏡を掛け直し、ほんわかとした口調で土方を見送った。 一般に、土方は鬼の副長、山南は仏の副長と呼ばれているが、対極に見えてこの2人は仲が良い。 いや、互いに信頼し合っているからか、言葉にせずとも先の行動が読める、と言う方が正しいのかもしれない。 「まるで父親だなぁ。」 近藤はそう言い豪快に笑った。 山南も可笑しそうに目を細め、ほくそ笑む。 「いえ、母親でしょう。」 特に沖田との関係は、と言い掛けた言葉を呑み込み、仏のような柔らかい笑みを浮かべた。 近藤は、山南君の方が母親のようだと思ったが、内心に留め尚も豪快に笑う。   
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