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まだ春の肌寒い朝。
まだ陽は登りきらず空は薄暗い。
少女は“壬生浪士組”と書かれた建物の門前に力尽きたように倒れていた。
そこに、朝早く起きて来た門番が現れた。
「おっ?
子供が倒れてらぁ。」
俯せに倒れている少女の頭を支えながら仰向けにして地面に着いた足で体を支える。
少女の顔は衰弱しきっているように見えた。
なりも険しい道のりを辿ったようにボロボロで、少女の身になにかあったと予感させる。
「こりゃあ大変だ!
副長に報告せにゃ!」
慌てて少女を抱えると建物の中に小走りで駆けて行った。
「ご苦労。
そいつが起きたら話しを聞こう。」
壬生浪士組の副長、土方歳三は眉間に皺を寄せながら、寝起きの不機嫌そうな声で言った。
土方は長く艶のある黒髪を頭の上で一つに束ねてあり、寝巻ははだけ色香を漂わせている。
顔もキリッとしていて整っていて男らしく、誰から見ても美しい。
これぞ“ますらお”なのだと言うに相応しい。
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