0+1秒~魔犬は満月の夜に吠える~

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 「犬探しぃ?」  信じられないとでも言うように、声が張り上げられた。  訊き返したのは少年だ。茶色がかった短い黒髪は、ワックスで固められる事なくツンと立っている。服装はワイシャツにネクタイ。ブレザーを脱いだだけの学生服姿だ。  「本当ですか?社長」  「本当だ。嘘を付いてもしかたないだろ?」  そう答え少年に“社長”と呼ばれたのは、少年と同い年程度であろう少女だった。漆黒と呼べる程に闇に溶けてしまいそうな、背中にかかる髪。こちらは学生服ではなく、モノトーンのゴシックドレスに身を包んでいる。  少女は綺麗というより、可愛いという方がしっくりくる、まだあどけなさの残した顔をしている。しかし今は、しかめっつらのような小難しい表情をしていた。  「何で犬探しなんですか。ここは探偵事務所じゃないんですよ」  「そんなの承知している。だから、この仕事もこの会社に相応しい物だ」  そう言って、少女は書類を少年に渡す。  それを受け取った少年は、書類に書いてある事をそのまま音読する。  「『名前はジョン、オス。色は黒、雑種であくびする時片目だけ閉じるのが特徴』」
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