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読み上げた瞬間、少年は「知るかっ」と書類を床に叩き付ける。
「創太お前……私の見付けてきた仕事にケチを付けるつもりか」
少年――――時雨創太(しぐれ そうた)は、“社長”の言葉に大きなため息をついた。
「知ってますか、社長。犬は帰巣本能が高いんです。放っておいても飼い主の所に帰ってきますよ」
「だから」
少女は苛々した口調で、さっきと同じ言葉を口にする。
「その仕事は、この会社に相応しい物だと言っただろう」
創太は自分で叩き付けた書類に目をやった。
さっき読んだ犬のプロフィールの下に、数行の文章が書いてある。
それは何故この会社に相応しい仕事なのか、良く書いてあるのではなまるあげましょう、と言いたくなる事が書いてあり。
ようやく理解した創太は、再びため息をついた。
「俺、こういう相手苦手なんですけど」
「文句を言うな。ほら、そろそろ行くぞ。ジョンがお待ちかねだ」
少女はゴシックドレスの裾をヒラリと翻しながら立ち上がり、部屋から出て行った。
少年はもう一度、書類に目を落とした。
そこには、こんな事が書いてある。
『霊気(オド)汚染により魔獣化』
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