0+1秒~魔犬は満月の夜に吠える~

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 読み上げた瞬間、少年は「知るかっ」と書類を床に叩き付ける。  「創太お前……私の見付けてきた仕事にケチを付けるつもりか」  少年――――時雨創太(しぐれ そうた)は、“社長”の言葉に大きなため息をついた。  「知ってますか、社長。犬は帰巣本能が高いんです。放っておいても飼い主の所に帰ってきますよ」  「だから」  少女は苛々した口調で、さっきと同じ言葉を口にする。  「その仕事は、この会社に相応しい物だと言っただろう」  創太は自分で叩き付けた書類に目をやった。  さっき読んだ犬のプロフィールの下に、数行の文章が書いてある。  それは何故この会社に相応しい仕事なのか、良く書いてあるのではなまるあげましょう、と言いたくなる事が書いてあり。  ようやく理解した創太は、再びため息をついた。  「俺、こういう相手苦手なんですけど」  「文句を言うな。ほら、そろそろ行くぞ。ジョンがお待ちかねだ」  少女はゴシックドレスの裾をヒラリと翻しながら立ち上がり、部屋から出て行った。  少年はもう一度、書類に目を落とした。  そこには、こんな事が書いてある。  『霊気(オド)汚染により魔獣化』  
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