261人が本棚に入れています
本棚に追加
影を挟み撃ちするような形で別れた二人は、月明かりに照らされた影の正体を見た。
――――それは巨大な犬だ。優に五メートルは超えているだろうその大きさ故に、犬と表すよりは狼と称した方が正しい気もする。
獰猛そうに唸り声を上げる口には、二人を食いちぎる鋭い牙が。二人の代わりに地面を砕いた爪は、まるで刃のようだった。
いや、そんな事は創太達にはどうでもよかった。
問題は、逆立てた毛は黒だという事。
この姿じゃ雑種なのかオスなのかわからないが……
「目標のジョンって、やっぱりこいつですかね」
創太は魔犬に警戒しながら、向かい側にいる少女に話し掛ける。
しかし少女から返事はない。
「……社長?」
「可愛くない」
は?と創太の口がポカンと開く。
「写真で見た時は可愛いかったんだ、ジョン。だが何だこれは。可愛いさの欠片もないじゃないか」
ここからでは見えないが、創太には少女が不機嫌な顔をしてるような気がした。
「……えーと、社長?もしかしてこの仕事受けた理由って」
「うん?犬が可愛いかったからだが?」
最初のコメントを投稿しよう!