0+1秒~魔犬は満月の夜に吠える~

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 影を挟み撃ちするような形で別れた二人は、月明かりに照らされた影の正体を見た。  ――――それは巨大な犬だ。優に五メートルは超えているだろうその大きさ故に、犬と表すよりは狼と称した方が正しい気もする。  獰猛そうに唸り声を上げる口には、二人を食いちぎる鋭い牙が。二人の代わりに地面を砕いた爪は、まるで刃のようだった。  いや、そんな事は創太達にはどうでもよかった。  問題は、逆立てた毛は黒だという事。  この姿じゃ雑種なのかオスなのかわからないが……  「目標のジョンって、やっぱりこいつですかね」  創太は魔犬に警戒しながら、向かい側にいる少女に話し掛ける。  しかし少女から返事はない。  「……社長?」  「可愛くない」  は?と創太の口がポカンと開く。  「写真で見た時は可愛いかったんだ、ジョン。だが何だこれは。可愛いさの欠片もないじゃないか」  ここからでは見えないが、創太には少女が不機嫌な顔をしてるような気がした。  「……えーと、社長?もしかしてこの仕事受けた理由って」  「うん?犬が可愛いかったからだが?」
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