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「お前に聞かずとも分かる」
「…なにを?」
「勝っても負けても、蝦夷が最後の戦場になるんだろう」
歳は私の頭を撫でながら、まるで独り言のように話している。
私は返事をすることも、声に出すこともしないでただただ歳に身を委ねているだけ。
「…かっちゃんは死んだ。昔からの仲間ももうほとんどいない。
俺にはもう、生きる意味なんざねぇんだ。
だから俺は死に場所を求めて今、この船に乗っている」
「……!」
その言葉に、凍りついた。
いや、歳のその気持ちは史料に書かれた通りで別におかしくなんかはない。
大切な人を護りきれず死なせてしまった…。
それはもう、自分に生きる意味がないということ。
歳はそう思っているんだ。
私は死んでほしくないよ。
でも…。それが歳の望みであるなら、私は止めることなんて出来ないだろう。
「歳…」
「俺の隣にお前がいなけりゃ、そう思ってただろうな」
…へ?
俺の隣にお前がいなけりゃ?
っていうことは、歳は死に場所を求めているわけじゃない?
私がいるから?
「あ?なんだよその間抜けな面は」
私はポカンと口を開いて歳を見ていたようで、それに気づいた歳はプッと吹き出していた。
あ…やばい。安心して涙が出そうなんだけど…。
そ れ よ り も 。
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