追憶夢語

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―――――――――――――――――――― 「ぶぇっくしょい!!!」 「うぇええ!?」 「悪い悪い」 海を眺めながら一君との会話を思い出していれば、歳の豪快なくしゃみによって引き戻された。 相変わらず豪快なくしゃみに笑ってしまう。 「中に入る?」 「…いや、ここだったらお前と二人でいられるから入らねぇ」 本当にこの人は…。 嬉しくなって思わず抱きつきそうになる。 が、私の今の格好では抱きつけない。 くそう…! 今はもう新選組だけでない。 女の私がついてくるのは非常に厳しい状況だった。 けれど、歳の一言で簡単に解決した。 “袴履いて髪縛り上げてりゃほとんどの奴が女だって気づかねーだろ? お前男の格好しても違和感ねぇからな” と。 確かにそうだ。 というか、動きやすいからと袴を履いてる事もしばしばあったし、声さえ出さなければそうそうバレたりしない…はず。 島原では簡単に見破られた記憶があるけどね!! だからくっついているところを新選組以外の人に見られたら歳に変な噂が流れてしまうかもしれない。 「…ったく。 今はほとんどの奴が寝てるだろうから誰も来ねぇよ。 ほら、来い」 私の考えていることがまた顔に出ていたのか、歳は察したようで腕を広げる。 私は少し迷ってから、何度か辺りを見回して誰もいないことを確認し、そっと歳に抱きついた。
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