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「…噂で聞いた。
新選組と名乗る男女二人が、近藤さんの首を持ち去りどこかへ消えたと」
どこで聞いたんだろう。その噂。
男女二人とは、間違いなく一君と私のことだ。
あれから、何とか近藤さんの首を取り戻したのだ。
…が、一君の気遣いで私は近藤さんの首を見てはいない。
一君だって辛いはずだ。
でも、彼は近藤さんを取り戻せたことを心から喜んでいた。
「近藤さんは、この会津にいるよ。
会いに行こう?」
私達が会津を出る前に容保様が言った通り、近藤さんの首は会津で葬られた。
きっと歳を心配して待っている。
歳は私を抱き締める腕にさらに力を入れ、少し掠れた声で言った。
「…かっちゃんを……護ってくれてありがとうな」
歳は絶望と不安の中で戦い続けてきた。
近藤さんの安否を気にしつつ、勝つために剣を振るっていた。
どれほど辛かっただろう。
その場に自分がいられなかったことが苦しかった。
でもこうして最後の最後に近藤さんを護ることが出来て、歳にそれを伝えられた。
…本当によかった。
鼻をすする音が耳に響く。
私は歳の背中を優しくさすりながら小さく笑った。
「歳こそ、笑ったり泣いたり…忙しいね」
「…うるせぇ、お前ほどじゃねぇよ……」
そんなやりとりをしてから、もうしばらくの間二人だけの部屋で静かに泣いた。

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