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「僕、見た目は人間だけど、ちょっと中身が違います。」
「…うん。わかってます。」
「それで僕は――」
彼の話はこうだった。
ここに来たのは偶然であり、ここが何処だかはもちろんわからないし、行く当てもない。決めていたことと言えば、一番最初に出会った人の後を付いて行こうと思っていたらしい。そして何度も言うが…名前はないらしい。
私の質問にも一生懸命答えていたが…ほとんどが「わからない。」もしくは「ない。」というものであった。
「なるほどね。なんか良くわからないけど…これで話は全部?」
「うん」
「そう。じゃあ話も聞いたし、私は初対面の人と一緒にいれる人間ではないので、申し訳ないけど…他当たってください。」
「えっ。そんな…ひどい…行くとこないんだよ…一人になっちゃうよ…。」
「だから…他当たればいいでしょ。私は無理なの。」
「なんで?僕のこと嫌い?」
この人は…常識はないのだろうか?初対面っていう関係をご存知でないのだろうか?
そして、私はきっと正当なことを言っているはずなのに…この…罪悪感にまみれた空気…私がまるで悪者のようなこの…空気はなんなんだ。
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