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ザザザァーッ!!
無我夢中で相馬は工場脇にあった背の高い草むらに飛び込んだ。
「っつ…!!」
勢い良く飛び込んだせいか、激しく転倒し体中に擦り傷ができた。
「はぁ…はぁ……くそっ!何だって言うんだよこの状況!!」
30メートルは走ったであろうか、しかし相馬には1キロメートル以上の長さに感じた。
この間一発もマシンガンの弾が当たらなかったのは奇跡と言ってもいい。
しかし、それでも身体にかかる負担は外面的にも内面的にも相当なものであった。
「はぁ…はぁ…、ん!?…げぼっ!!おうぇっ…」
相馬は嘔吐した。
無理もない、突然の火災に部下の死、さらには銃弾の雨の中を全力疾走…
当然の事ながら相馬の体力は極限にまで擦り減っていた。
一時的に身を隠したといっても所詮は草むら、見つかって蜂の巣にされるのも時間の問題である。
かと言ってこれ以上移動する体力は相馬には残されていない。
出来ることといってもせいぜい草むらの中を這い回るだけのささやかな抵抗だけである。
依然として絶望的な状況は続いている。
「ちくしょう…ちくしょう!!」
完全にパニック状態に陥った相馬。
四面楚歌…
しかし、神はまだ彼を見捨ててはいなかったらしい。
「アンチスキルだ!無駄な抵抗はやめて大人しく武器を捨てて投降せよ!!」
…神が来た!
相馬は心の底からそう思った。
「た、助かった…!」
ホッと胸を撫で下ろす相馬だったが…次の瞬間、事態は思わぬ展開を見せた。
ダダダダダッ!!
再び響く銃声。
それにこだまするかのように聞こえてくるアンチスキルの悲鳴。
…まだ何も解決していない。
相馬の身体は再び恐怖に蝕まれ始めた。
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