初夜

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彼は月明かりの夜に、私の前に現れた 私はそれをまるで“あの人”のようだと思ってしまった なぜだろうか 彼は“あの人”とは違うと、判るのに 私と“あの人”の初めての夜は静かだった それは静かな闇だった 私と“あの人”の最後の夜は激しく、穏やかな夜だった ごうごうと猛る、それでいて不思議と静かだった 私と彼の最初の夜も静かだった それは静かな月夜だった みんなは、その誰かと夜を過ごすと知って出会うのだろうか? 誰かと、夜を過ごしたいと望むのだろうか? かつて私は“あの人”と夜を歩むことを受け入れ、いつのまにかそれを望み歩んだ 願わくば── と私は今なおあの夜に思いを馳せる そしてその記憶で、今日の私の夜を歩き続ける でも、今も解らない 私は今日、選択をしていない 決めるつもりもない それでも、私は彼と共に新たな夜を歩むのかもしれない
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