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だが、学院に通わない理由はそれだけではなかった。
一番の理由は、ロクシス自身が感染しないのではなく、異法を取り込んでしまった、という可能性である。
すでに体内に異法を宿していたのなら、障気に感染することもない。
だが、それは同時に、ロクシスが異法使いだということになってしまう。
人間の形をした異法使いなど、前代未聞だし、自分が異法使いかもしれないとしたら、学院に行くなんて、殺されに行くようなものだった。
そんな取り留めもないことを考えていると、辺りはすでに薄暗くなってきていた。
ロクシスは、ヴァイス聖会へ帰ろうと思い、立ち上がり、森へと入っていった。
森の中は、薄明の光さえ遮り、深い闇に覆われている。
ロクシスは、僅かに残った残照を頼りに森の中を進んでいった。
「っ!
あ、あれは……!」
しばらくして、森の向こうから煙が上がっているのに気付いた。
ゾクリ、と背中に氷柱で貫かれたような寒気が走る。
その焔は、轟々と燃え盛っていた。
まるで、十年前のあの時のように。
それに、焔の上がっている方角は、ヴァイス聖会のある方だ。
嫌な予感を感じたロクシスは、ヴァイス聖会にむかって駆けた。
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