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しかし、異法使いはだんまりを決め込み、ただただ眼下を望むだけだった。
ロクシスは舌打ちし、リリィであった異法使いに目を向けた。
辛うじて、リリィの姿を保ってはいるが、その姿は確実に、よく見知ったトカゲの異法使いに近づいていた。
あの、綺麗な緑色の髪も全て抜け落ち、リリィとは似ても似つかない。
「リリィ……、どうして、お前がっ……」
リリィは、嗚咽のような呻きを上げながら、ゆっくりとロクシスに近づいてくる。
そして低く何かを呟くと、突然、リリィの前に黒い火球が現われ、
それはロクシス目掛けて飛んできた。
ロクシスは、僅かなステップを踏んで、火球を避ける。
異法使いの代表的な異法『イヴィルボール』だ。
だが、最も恐ろしいのは異法ではない。
それは避ければ済むことだ。
一番恐ろしいのは、障気だ。
障気は、異法が通った空間にさえ発生する。
現に、火球の通った軌跡には、黒い黒煙が上がり、それはすでにロクシスの体を取り囲んでいた。
普通の人間ならば、すでに障気に侵され、何らかの症状が発現してもおかしくない状況だ。
しかし、ロクシスに障気は効かない。
ロクシスは、フンッ! と木剣で障気を吹き飛ばすと、リリィ目掛けて突貫した。
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