第一話 虚ろなる転

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「……っ、んなこと、俺だって出来るわけないだろ! リリィを殺すなんて!」 「お願い、ロクシィ! もう時間がないの! もうすぐ、私は意識もなくなるわ! そしたらきっと、ロクシィを殺してしまう! ……そんなの、イヤなの」 リリィは、苦しそうに言葉を紡いだ。 リリィはもう、元には戻れない。 分かってる、分かってはいる。 だが、だからってそう簡単に割り切れるもんじゃない。 「お願い、ロクシィ。 私を人殺しにしないで。本当の化け物にしないで……お願い」 分かってる。 もう、リリィは元には戻らない。 それが、リリィの願いなら……。 「わかった」 ロクシスは、顔を苦痛に歪め、頷いた。 リリィの手から力が抜け、ロクシスは立ち上がった。 木剣を握る手に力を入れ、鋭くなっている剣先をリリィに向けた。 「さよなら……、リリィ……」 ロクシスは、リリィの胸に木剣を突き刺した。 「ありがとう……、ロクシィ──」 それが、リリィが出した、最後の声だった。 木剣で貫かれたリリィは、倒れ、灰になって消えてしまった。 「ウァァァァァァァァァアアアアアアアアア!!」 ロクシスは啼いた。 そして、そのまま気を失い、地面に倒れた。 ──ありがとう、ロクシィ……。 私ね、ロクシィが……大好きです──
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