第一話 虚ろなる転

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「おっそうなのか! そいつは悪かったな。 取りあえず弁当くれよ」 「んっもう、本当呆れちゃう。 はい、これお弁当。 明日ファティさんが来るからって、張り切って出てったのに、昼寝してるなんて……、ロクシィって本当、やる気あるんだかないんだか」 「やる気はあるさ。 何たって師匠が稽古つけに来てくれるのは、一年ぶりだからな」 ロクシスは立ち上がると、草の上に置いてあった木剣を取った。 「ねぇ、ロクシィ。 そんなにファティさんに稽古をつけてもらいたかったから、メスト聖法学院に入学すればいいじゃない」 「別に……、群れるのとか好きじゃないんだ」 ロクシスは、リリィから目を逸した。 メスト学院への入学を拒む理由は、本当は違うのだが、それは例えリリィにも言える内容ではなかった。 ファティ師匠との約束であったし、何より本当の理由を言って、リリィに拒絶されるのが怖いのだ。 そうしていると、リリィは再び覗き込んできた。 「そんなこと言って、本当は私と離れるのが寂しいとか?」 「何言ってんだ? いいから、もう帰れよ。 今からまた稽古すんだから」 「はいはい、頑張ってね。 未来の剣聖さん!」 シッシッと手で払うと、リリィはクスクス笑いながら、森の中へ消えていった。
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