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あの十年前の、冷たい雨が降った日……。
あの日から、すべてが始まった。
──あの日は、いつもと変らない穏やかな日だった。
父さんも母さんも、畑仕事をしていたし、妹のイーシャも外で遊んでいた。
自分だけが、家の中で昼寝をしていた。
いつも通りだった。
それが突然、崩壊した。
イーシャの叫び声がして、飛び起きると、すでに村は焔に包まれていた。
勿論、外に飛び出したわけじゃない。
臆病な自分は、窓から外の様子を窺っていた。
外には、二足歩行のトカゲの怪物が何匹も闊歩している。
異法使いだ。
大した知能も持たない生命体だが、トカゲたちの使う異法によって生じる障気は脅威だ。
腐食、人格喪失、記憶の欠落、火傷、昏倒、嘔吐、融解、病……、最悪の場合絶命することもある。
イーシャの姿は、もう外にはなかった。
逃げ惑う村人たちが、トカゲたちの異法にやられ、喰われていく。
恐怖に飲み込まれ、足が竦み、その場に座り込んだ。
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