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俺の家と本城の家とは距離があるために頻繁には会えない。
愛来の父親も多忙な人だったし、俺の父さんもがむしゃらに働く人だった。
だから愛来と想いを通わせても、それを育む時間はあの夏の日々しかなかったのに。
それを楽しみに1年間を過ごして来たのに――――
「なん、で?俺は…もう愛来に会えないってこと?」
喉が焼けたと錯覚するくらいにカラカラだった。
全身が熱くて奮えがくる。
俺はそろそろ夏の旅行の話が出る頃なのに一向に話が出ないのを不思議に思った。
無邪気に予定を父さんに聞いたら、返ってきた言葉は予想もしていないものだった。
突然のことで頭が働かない。
気持ちがついていかない。
俺の言葉に答えることを放棄した父さん。
そして、父さんの横で青ざめた顔で硬く目を閉じる母さん。
ただ事じゃない――…
中1ながら、背筋が凍るような冷たい空気を読んだ。
駄目だ…これ以上は二人から何も聞けない。
これ以上、二人を困らせてはいけない。
聞いてはいけない―――!
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