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俺が知る今までの父さん、母さんと違う。
俺は二人の態度に自分の我が儘を言い通すことが出来ず固唾を呑んで事の成り行きに身を任せるしかなかった。
温かい家庭で育ってきた俺が感じる初めての恐怖。
愛来に会いたいんだって、旅行に行きたいんだって、声にならない声が出ているのに。
言えない…
こんな姿の父さんと母さんに言えない…
二人に言ってはいけない―――
「ん…分かっ、………た」
ただならぬ雰囲気の中、俺は初恋の相手を想い続ける気持ちを封印するよう、即座に暗示をかけた。
俺は愛来を想っちゃいけない。
愛来を忘れなきゃいけない。
愛来を捜してはいけない。
愛来を
愛来を
愛来を
心の中から消さなくちゃいけない
そうしなければ、この絶望感からはい上がれない――――
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