放棄

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俺は、『これだけのことなのに』愛来を想い続けることが出来ない弱い男だと初めて気がついた。 そして もう二度と会えない相手を…捜してはいけない相手を想い続けられるほど、俺は大人じゃなかった。 俺は目の前でうなだれる父さんと母さんが壊れることに、家族が離れることに恐怖を抱いた。 愛来への気持ちは揺るぎないもののはずなのに――― ガキな俺はどちらかを選べなかった。 目の前の二人を裏切ってまで自分の気持ちを押し通せない。 愛来への気持ちを放棄しなければ俺が俺でなくなる。 だから、心から愛来の存在を消す以外、方法が考えられなかった。 愛来を忘れる 愛来を記憶から消す じゃなきゃ、俺が俺でいられない 苦しいのに 忘れたくないのに 苦しい…苦しいのに――― しかし、 愛来を忘れる決意をした俺はここから壊れていったんだ――――
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