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2.冷静
そんな俺に転機など訪れるはずもなかった。
よくある物語なら、そんな思いを変えていってくれる異性が登場したりするものだが、現実にそんなことが起こるわけがない。
正確に言えばないこともないのだろうが、俺がそんな星の下に生まれているわけがない。
そんな奇跡を引き当てるぐらいなら人並みの感情を持ち合わせているだろう。
だが、そんな俺にも大切な女友達がいる。
むしろ、この感情の欠損のおかげで親友でいられているのだろうから、喜ばしいことだ。
友達から恋人に発展などそんな文章自体がおかしい。
友達から恋人になどなるわけがないのだ。
なったとしたら、それは初めから友達などではない。
一方は友達に思っているかもしれないが、片一方にはあわよくば、という下心が少なからず、だが確実にあるのだ。
反論が多々ありそうだが、紛れもない事実なのだ。
そんな発展を期待した友情など似非以外の何物でもない。
その点、俺と彼女は違う。
お互いにそんな思いなど一切ない。
男と女という違いはあれど付き合いはその原点である、人間と人間だ。
異性は性欲の捌け口でしかないと言ったが、さすがにそれは語弊だった。
俺と彼女の間に性欲などは存在しない。例え、俺の目の前に全裸の彼女がいたとしても決して欲情することなどない。
俺は自信を持ってそう言える。
これは俺が彼女を女性としてではなく、人間として、親友として唯一無二の大切な存在として思っているからだろう。
そう、つまり、俺は女を大事に思うから抱くのではない。
むしろ、その逆だ。
ただ、快楽の為だけに抱くのだから余計な感情など必要ないのだ。
その行為の果てにいくら罵倒され非難されようとも知ったことではない。
それが俗世間でいう最低な人間であろうと構わない。
そうでなくとも俺という人間が底辺であることに変わりはないのだから。
冷たい人間と思われるかもしれない。
だが、自分では一度もそう思ったことはない。
むしろ、セックスのときは誰よりも激しい情熱を持っていると自負できる。
一般的にそれが冷たい人間と言うのだろうか。
ただ、冷静に事を見極めているだけなのに。
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