Black・章大

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昭和19年― あの頃私は18歳やった。 その時期はまだ戦争中で 食べる物もなく 勉強も出来ずに ただただ貧しいばかりやった。 周りは戦争万歳 日本万歳なんて言うけど 私は何が戦争や。 何が日本万歳や。 戦争をする者にいい人なんておらへん。 それはバカな私にでも分かった。 そんな中で 私の唯一の生きる希望は 「奈緒!!」 「あ、章ちゃん!!」 大好きな人 同い年の章大やった。 章大はもともと身体が弱くて 最近になってようやく走れるくらいになった。 「もー、そんなに走ったらアカンやんか!!」 「ええねんっ。はやく奈緒に会いたかったんやもん」 そう言って章大は笑った。 私達はいつもよく来る川原に来ていた。 私はチョロチョロと流れる水の音や 周りに咲く小さな花が大好きやった。 ここは まるで今戦争をしていて悲惨な状態やって思わせへんくらい 綺麗な場所やった。 「…なぁ、章ちゃん」 「ん‥?」 「いつかこの世界に…戦争がなくなって、平和になる日が来るんかなぁ‥?」 このままずっと戦争が続くんかなって すっごく不安になる時が来る。 「…来るよ。絶対来る。今はみんなが辛い思いしてるけど…やからこそ幸せな日々は絶対来るから」 「じゃあ…その日が来るまで…その日が来ても、ずっとずっと一緒にいような?」 そう言うと章大は 私から目線を反らした。 「…せやなぁ…」 私はそんな章大に不安を覚えた。
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