Black・章大

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「「天皇バンザーイ。日本バンザーイ」」 ついにこの日がやって来た。 私は沢山の人ごみの中 押し押されながら章大を探した。 「奈緒!大丈夫?」 その時 章大は私の腕を引いてくれた。 「章ちゃん‥!!」 章大はいつもとは少し違ってて 本当に行ってしまうんやなって 身に染みて感じた。 「カッコええやろ??僕何でも似合うからな~(笑)へへ‥」 「‥アホや。何うぬぼれてんねん‥」 「奈緒もアホやろ(笑)」 「絶対‥!!絶対戻って来てや…?」 「分かってるよ。心配せんで」 私の頭をポンと撫でて 章大は笑った。 「これ、お守り!!ずっと持っとくんやで?きっと守ってくれるから」 「おーきに…」 その時 出発を知らせる音が聞こえた。 「章ちゃんっ…大好きやで!!」 「…ははっ。僕も、奈緒がだーい好きや!!」 そして私達は別れた。 これが 悲しいことに私達の最期の会話になってしまった。 あくる日章大の死を知らせられた。 それは 戦争が終わってすぐのことやった。 団体で撤収しようとしていた時 ケガをしたアメリカ人が道端に倒れていたそうで 章大は班長に殺せと命令されたらしい。 章大は"嫌や" そう言って聞かなかったと。 そんな章大にしびれを切らした班長が 銃で章大を撃ったんやって。 それを聞いた時 その班長を探して殺してやろうかって思ったけど。 そんなことしたら 章大の思いを踏み躙ってしまうことになるから… もうたとえ誰でも命を落とすなんて残酷なことは あってほしくなかったから。 そう思うと 次第に恨みも消えていった。 「…章ちゃんらしいわ…」 そう思えたんよ。
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