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「お前、鼻毛出てるぞ。」
先輩の口から出た言葉はあまりにも唐突だった。
「マジっすか?」
半信半疑に返答した僕だったが、突然の言葉に事態飲み込めず動揺を隠しきれなかった。
冷静を装いながらも僕の体は小刻みに震えていた。
さらに追い撃ちをかけるかのように先輩は思いも寄らない衝撃の一言を発した。
「一本とか二本とかそうゆうレベルを越えてもろに出てる。」
言葉が出てこない。僕は逃げるかのようにその場を立ち去った。
トイレに駆け込み鏡でチェックする僕。
現実はあまりにも残酷だった。
鼻毛が僕にあいさつをしていた。
羞恥心と愚かさに自分に対して腹が立った。
即座に出ている鼻毛をむしり取りトイレを後にした。
家に帰り嫁に鼻毛の出来事を伝えると思いもよらない言葉が返って来た。
「知ってるよ。一週間くらい前から出てたよね。」
僕は耳を疑った。
「何で、教えてくれなかったの?」
信じていたはずの妻に裏切られた僕の心はガラス細工のようにもろく粉々に砕け散った。
すると妻は
「真実を伝えるとあなたが傷つくと思ったから、ずっと言えずに悩んでいたの。ごめんなさい。」
妻は涙ながらに僕に話してくれた。
相手を思うが故のすれ違い。それは時として人を傷付けてしまう。しかし、愛の深さが時間と共に二人の蟠りも消し去るであろう。
それからというもの僕は出掛ける前の鼻毛チェックに余念がない。
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