『jonsi』

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90年代に続くゼロ年代は、ポジティブな方向へ振れていきました。 リバティーンズやストロークスが初めにダムを壊して、そこへアーケードファイアや、アニマルコレクティブのようなブルックリン系の音楽が花の咲くように現れてきました。 二度も主人公が死んだドラゴンボール(作者の人柄のためかあっけらかんとしていますが)に続いて現れたのは、キャラクターが「生きたい」と叫ぶワンピースでした。 文学の世界では、最近の作家さんをあんまり知らないのですが、疾走するような文体の古川日出男さんだとか、妄想から飛び上がっていくような森見登美彦さんなんかが思い浮かびます。 生きている感じ、というのがゼロ年代のテーマだったのだと思います。 そのせいか近頃レビューなどで「多幸感」という言葉を(薬物が発祥のようですが)よく目にするような気がします。 なんの話か忘れかけてきましたが、本題はシガーロスです。 分類するならポストロックになるのでしょうか(あんまり意味のない話でしょうか)、94年に結成97年にデビューしたシガーロス(ウィキペディア調べ)は、どちらかというとマイナス方向のエネルギーから出発しています。 最初のアルバムは聴いていないのでかなり怪しい意見になりますが。 アイスランドの国柄なのでしょうか、シガーロスの音楽は人間世界の外で鳴っているような、大変美しいスケールの大きなものです。 それはどこか、「死」を想起させるものでした。 ライブ会場では「冷たい音」という表現を耳にしました。 2枚目の「アゲイティス・ビリュン」、3枚目の通称( )などは特に顕著です。 ( )のラストなどは壮絶な幽玄を感じさせます。 ( )を聞いて特に感じるのですが、人間味の薄い、非人情の世界の音がします。 そして恐らく過渡期の「Takk...」を経て(個人的にこの作品はかなり好きです)発表された邦題「残響」は、一気に上へと振り切れたものでした。 冒頭から鮮やかなヨンシーの声、弾かれる弦の音、深く響いてくるリズム、生きているエネルギーに溢れています。 そこからさらに進んだような作品がヨンシーのソロアルバム、タイトルもストレートに「Go」でした。
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