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「榎木…くん?」
俺の呼びかけに気付いた先生が、振り返って俺の名を呼ぶ。
「榎木くん…今日、来てくれたんだね。
壇上から榎木くんらしき人が見えて、まさかとは思ったんだけど…
ありがとうね。」
うつむき加減で篠田先生が言った。
こんな時だというのに、篠田先生が自分の姿に気がついていたという事実に嬉しい気持ちになる。
でも…先生…
どうして、そんな泣きそうな顔、してるの?
「そ、それじゃ、私もう行かなきゃ…。
元気でね…!」
そう言って顔をあげた篠田先生の目から、一筋の涙が流れる。
「先生っ…!」
俺は思わず篠田先生を抱きしめた。
今度こそ…一人で泣かせたりしない!
「先生…俺、先生のことが好きなんだ。」
「……」
「だから…このままお別れなんて…もう会えないなんて…嫌だ…。」
俺まで泣きそうになりながら言った。
篠田先生はというと、抵抗する様子もなく黙り込んでいる。
ヤバい…あまりのショックで固まってるのか…?
心配になって抱きしめたその腕を緩めようとした瞬間だった。
「う…うわぁぁぁあん」
篠田先生が、まるで子供のように泣き出した。
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