事故

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俺はお世辞にもいい生徒とは言えなかったし、学校にはほとんど行かない、先生には暴言を吐く、正直どうしようもない不良生徒だった。 だから、井崎先生に学校をやめると言っても、「あ、そう。」ぐらいにしか思われないか、もしくはやっかい払いができたと喜ばれると思っていた。 それなのに、俺が学校をやめると言うと、井崎先生は男だというのに半泣きになりながら俺を引き止めようとした。 「もう少し考えてみないか?」 「学校にあまり来れなくても、やめることはない。」 「卒業させてやりたい。」 その言葉の一つ一つに、井崎先生の本気と、俺への優しさが詰まっていて、俺まで泣きそうになっていた。 どうしようもない俺のことを、こんなにも考えてくれていたなんて… そのことにちっとも気がつかず、ただただ鬱陶しがって暴言を吐いていた自分が情けなく思えた。 井崎先生は、俺の意志が固いと分かると、寂しそうな、でも優しい目をして、 「頑張れよ。できる限りの協力してやっからな。」 そう言ってくれた。 そして次の日に、井崎先生から電話がかかってきて、この…今俺が住んでいるマンションを紹介してくれた。 広くはないが、安くて綺麗で、何より駅から五分というのが魅力的だ。 俺は、初めて、心から、井崎先生に感謝した。 ちゃんと頑張ろう…そう思った。
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