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暗闇が支配する宇宙空間の片隅に浮かんでいたその人工物は、自らの放つ輝きによってその輪郭をはっきりと浮かび上がらせている。
それ故に、ヒトの住まう惑星から隠れるように遠く離れた位置に存在するそれこそが探し求めていた目的地であることを確認することができたとも言えるだろう。
勇者機兵隊の本部である人工惑星エクセリオンを正面から見据えながら、自分は誰にともなく言葉を発していた。
「勇者機兵隊……あらゆる理不尽から生命を守るという目的を掲げている組織が、その命を容易く奪い去ってしまえるほどの戦力を抱えているという事実は、何とも皮肉な話だ」
言葉の端に零れるものが強い感情であることは間違いないはずだが、それが嫌悪や怒りに類するものかと問われれば首を傾げるしかないだろう。
目的を果たすために必要な能力を保有しているに過ぎないという根本的な部分を理解してしまえば、勇者機兵隊の持つ傲慢とも言える思想を度外視すれば納得する以外にないという、合理的な判断が下せてしまったというのももちろんある。
しかしそれ以上に、借り物の目的意識によって突き動かされていることを自覚する身としては、自分自身の抱えている感情そのものが滑稽でしかないのだという、自虐の面が色濃く出てしまっているのだろう。
自らの顔立ちも、無造作に伸びた黒髪も、その隙間から覗いているであろう赤い瞳も、全ては一つの目的意識の下に与えられた作り物でしかないのだと自覚しているからこそ。
クロークと呼ばれている自分は、世の中にある全てのものを斜に構えた受け取り形しかできない人形であるのだと、自らを定義していたのである。
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