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故に、自らの行いを省みて躊躇するなどといった感情が入り込む隙間のない、目的意識と合理的な判断基準によって形成された視点を持つに至った認識が揺らぐことはない。
すなわち、今の自分が目前に広がっている環境を徹底的に破壊するためにこの場にいるという現実に対して、何ら余念を挟む余地は存在していないということである。
「大きく開いた技術的な差を埋めるためだけに用意された数の暴力を駆使して、その最大戦力の崩壊を促そう。そのための私であり、そしてそのためのファントムなのだから」
人工惑星を確認している自分が生身で宇宙空間に佇んでいるわけではなく、この身は環境に適応した機動兵器の操縦席に収まっていた。
人の立ち姿を連想させる黒のシルエットを基本として、推進力を備えた可動式の翼が悪魔を思わせる翼のように背中に備わっており、頭に相当する部分には一つ目の真っ赤なカメラアイが光っている。
量産型デスファントムと呼ばれるこれは、機兵という呼び名で流通している人型の機動兵器だ。
そして自分の後ろには、自動制御された同型の機体が3桁に迫る勢いでズラリと整列しているのだ。
「さて。生命を守るために戦う勇者機兵隊とは、自らを守るためにどこまで戦うことが出来るものか、な」
挑発的な台詞でありながら自覚する以上に抑揚のない淡々とした響きの呟きとなったのは、これから実行することに対してあらかじめ指定された命令に従う以上の感情を抱いていないが故だろう。
故に、続いて紡がれた言葉にもまた余計な感情が込められることはない。
「全てを破壊しろ。生命など、一時の幻であると知らしめるように、だ」
号令に応じる声はなく、機械的に制御された機兵たちは一斉に翼を広げて目標である人工惑星を目掛けて前進していく。
もはや命令を止める手段はない。
侵攻を開始した機体の姿を確認できたところで、自らも等しく命令に従うために機体を操作し、その後に続くのであった。
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