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下された命令に対して忠実に行動する無人機の群れが、押し寄せる荒波のように目標を飲み込んでいく光景がそこにある。
精錬された機械文明の象徴とでも言うべき景観は集中する攻撃によって崩れて行き、これに抗うべく身を呈して立ち塞がってきた機兵もその圧倒的な物量差を前に追い込まれていった。
機体性能という面ではまるで及ばない程のレベル差がある相手に対してこのような結果を得られたのは、今日に至るまでにこれほどの戦力を確保することができた、時間というアドバンテージを有効に活用したという点が大きいだろう。
それは戦力を生み出すための機械的な設備をこちらが最初から保有していたことに起因しており、同時にそれが存在していることそのものがクロークという自分を今の命令に縛り付けている根源でもある。
それが幸か不幸かなど、目的意識に縛られている自分に判断する権限はない。
あるのはただ、勇者機兵隊本部を襲撃するという命令から逃げられない自分と、その自分の命令によって犠牲も省みずに攻撃を強要されている無人機の群れが、火力と暴力によって全てを蹂躙していく現実だけであった。
「これが、脅威となる敵を排除するための戦略というものか」
そこには気分の高揚も悲壮的な感傷もなく、ただ目前の有様を現実として認識するだけの、単なる作業がそこにあるだけである。
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