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お江戸八百屋町。
今日も晴天晴れの青空が江戸の町に続いている。
江戸の日本橋に佇む薬種問屋の庭で、譲葉(ユズリハ)は日課の竹刀の素振りをしている。
年の功は、15。
橙色の小紋の着物に膝下までの紅色の短い袴。長い茶色のブーツ。首元を隠すように巻かれた白いマフラー。
よく日に焼けた肌に勝ち気な鳶色の瞳に、桜色の唇
腰までの長い亜麻色の髪をポニーテールにしている。
「はっ!」
譲葉は、目の前に落ちてくる青い葉を剣圧で切りさいた。
「姉様!ひと休みいたしませんか。」
お縁に座って譲葉に声をかけるのは、この薬種問屋、薬師丸屋の一人娘の音羽(おとわ)だ。
譲葉とは、一つ歳が違う。幼顔に大きなつぶらな茶色の瞳。膝上まである髪をツインテールにしている。白い着物に青い長袴をはき、足首で白い紐を結んである。
白い着物と青い袴は、薬師の証であり、白い紐は見習い、という意味だ。
「あ、うん。今、行く。」
譲葉は、ほがらかに笑ってお縁に腰を下ろした。
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