年上の男

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答えは簡単だ。 「行かない訳がない。どんなに言っても聞かない。だって決めたんだ。」 俺は一気にまくしたてた。 相馬さんは押しに弱いから何も言えなくなる。 それを知って以来、俺は出来る限り、用件を大急ぎで伝えるようになった。 土方先生なんかには、「男のくせにかしましくて伊庭みてぇだ」といわれる。 それが嬉しいのもあるが、大切な用事の時ほど特に早口になった。 「相馬さんはさぁ…心配しすぎなんだよ」  「そんな事ないさ」 「いや、あるね」 俺は力強く首を振り、あの事を思い出して手を打つ。 「そう、そう。あの時だってそうじゃないか…」 「あれは島田さんが!」 大慌てで否定する相馬さんは可愛らしい。大の大人に向かって(可愛らしい)と言うのは、少し失礼な気もしたが、(可愛らしい)以外の言葉が思いつかないのだから仕方ない。 つくづく俺は語彙の乏しいヤツだと思う。
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