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黒、茶、白、三毛、サビ、キジ。
名前も知らないような猫に多用な色の組み合わせの猫が一、二、三……十一匹もの数が空き地で集まっていたのだ。
奇妙な現場に出くわしたと思いながらも、そうそう出会える事もできない猫の集会ゆえに妙な心の躍動と興奮を感じた。
猫の邪魔にならぬように路地から不動を保って観察するに、猫たちはこちらに気付いているようである。
輪を作っているわけでもなく、数匹がじゃれ合っていたりしているだけだったのだが、奥に居た黒猫がこちらを一瞥し「にゃお」と一鳴きすると猫たちが綺麗にこちらを見つめてきたのである。
背筋が凍るほど、統率が取れた一連の動作に、軍隊じみていると素直な感想を抱いてしまうほどだ。
逃げ出そうにも、突然動いては逆に猫たちも驚くだろうと思い、刺激しないようにそのままの状態で沈黙を守っていると猫たちは飽きたように、一匹、また一匹と視線を戻し、じゃれ始めたのである。
一先ずは、猫たちに害になる人間ではないと判断されたことに安堵のため息を漏らしてしまう。
今となっては、先ほど感じていた食欲もなりを潜めてしまっていた。
どうにも不思議な光景であった。
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