プロローグ

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「では最も完全な天使を送る事にしよう」 「それならルシフェルですね」 「ああ・・・いや、それはイカン。彼は今苦しみの時の内だ。その上にこの大任はちと難しかろう」 「ガブリエルなんてどうですか? メッセンジャーとしては最適ですよ、慣れていますし」 「いやいや、それはマズイ。降臨場所が炎天下の真夏日続きだから、ガブリエルなんぞが行ったら、余計暑くて、預言者が干からびてしまうからの」 「えーと、じゃあミカエルなんてどうでしょうか? 彼ならルシフェルに劣らず優秀ですよ」 「ウリエルよ、お主は本当にミカエルにばかり無理難題を押し付けるな。本来なら預言関連はお主の仕事だぞ」 「まあそうですがね、今は無理ですよ。私もラファエルも、あの問題が解決しないことにはね。ところで、ミカエルについて心配があるとすれば、潔癖症で人間のロクデナさ加減に耐えられるかってところでしょうね」 「大丈夫じゃ、最近はよく笑うようになったからの。しかしどうにも彼にばかり頼るようで済まない気がするな」  そうして再び神の言葉を携えたミカエルは、気が遠くなる程の高みにある天界から、地上へと降臨する事となった。  神の荘厳な言葉を背負い、たった一人で大宇宙を突き抜けるというこの仕事は、神がいかに済まながっても、ミカエル以外に果たせる天使は、現在のところ天界には、ウリエルとガブリエルとメタトロンの三人しかいないのだ。  星々を横目に光よりも速くぶっ飛ばし、故ない憧れや、怠惰な希望などの絡みつく腕をすり抜け、ルシフェルの漂う苦しみを切り裂き、最後に贖罪の檻をぶち破って、ようやく大天使ミカエルは地上へと降臨した。
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