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足元に注意を払うべきだというミカエルの忠告を無視して、エンデは足早に階段を昇っていった。
そうしながら彼は古い歌を想い出していた。
天国への階段がどうのこうのという歌だった。
この階段を昇りきったら、そこに何があるのだろうか。
息もつけない程の花園や、清らかな光に満ちた空間などは、全く期待できそうもない。
ここが地獄だとしたら、人間は天使のように飛ばない限り、天国には行けないだろうとエンデは考えた。
地獄では何処まで行っても、何処まで昇っても地獄なのだ。
だからきっとこの階段を昇りきっても、そこには何一つ変わらない光景が待っているはずだ。
その中で、よどんで、息もつけない程の蒸し暑さの中で、一人の女が死んでいる。
新しい命を産み落として。
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