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「チョット待て! 今なんてった? 奥方って・・・」
焦るエンデを全く無視してミカエルは話し始めた。
「エヴァ・クラウン。現在17歳。最近生まれたばかりの赤ん坊を、未成年保護法のもとに奪い取られ、エヴァ本人は全く無視され放り出された。
今幼児は孤児院を潤す大事な商品になってるからね。お役所のお偉方とくっついて荒稼ぎしているのだよ。まぁ言ってみれば、合法的な人身売買ってとこだね」
「だから待てって、おい! 今17って言ったか? まだほんの子供じゃないか」
「だが立派な母親だよ。彼女がいかにして我が子を守ろうとしたか、君にも見せてやりたかったね。
彼女の両親は根っからのヤクザ者で、彼女は12歳になるとすぐに売春を強要されたんだ。
狂ってるよね。
それがイヤで彼女は家を飛び出した。
12歳の子供が一人で生きてくのにどれ程の苦労をしたろうね。
15歳になってすぐに恋人ができた。勿論そいつも口だけのろくでなしでね。そいつの借金を払うために体を売ることを決意した。
後はお定まりのコースをまっしぐら。知らんうちに子供ができて、男は逃げて、金は無い、市の生活保護課に追っかけられ、児童福祉課に赤ん坊を奪われて、ただ生活のために街角に再び立つ事にしたのさ」
「ひどい話だ」
「だが現実さ」
エンデはそのよくある話に不思議なほどの感銘を受けた。そして口に出しては、
「俺はロリコンじゃないんだぜ」とだけ言った。
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