死せる義人ロト

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死せる義人ロト

「さて、もうひと働きしてもらう時がきたようだ」  唐突にミカエルが言った。 「どうでもいいが、突然便所の天井から出てくるってのは、アレか? 喧嘩売ってんのか?」  そう言ってエンデは、しみだらけの天井から生えてきたような、逆さまのミカエルを見上げた。  エンデにしてみれば、トイレで新聞を読む神聖な時間を、テミスの泣き声以外で邪魔されるなど、まさに言語道断である。  最近ではエヴァが昼にウェイトレスの仕事に出ている間は、エンデがテミスを見る事になっている.  だから日中は忙しくて堪らない。  実際今ようやくテミスが泣き疲れて寝入ったところを見計らい、ほっとしながらトイレで「新型耐性菌流行」の記事に目を通していたところだったのだ。 「いやいや、こちらにも都合があってね。今回も結構切迫した問題なんだよ」  ミカエルは便座に腰掛けて睨みつけているエンデに、一礼しながら降りてきた。  「しかし君も結婚してよかっただろ、テミスもだいぶ大きくなったし、何よりも君自身が身奇麗になってるよ」 「用があるなら早く言えよ、って言うより、いったん外に出て待つとかできないのかよ、お前は」
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