死せる義人ロト

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 ミカエルが暢気に火急の用件を訴えている頃、郊外の大型ショッピングセンターで、一つの事件が起こっていた。 「お母さーん! あのおじちゃんが飴取ったー!」  広々とした駐車場で、小さな子供の声が響き渡っている。  その男は、ボロボロの布キレを体中に巻きつけ、まるでシュレッダーにかけられたかのようだった。  脳みそが家出していることを隠そうともしない様子は、男らしささえも感じられ、その頭蓋は鳥の巣のような図太い毛髪で覆われていた。  一言で言えば「浮浪者」「ジャンキー」「犯罪者」の類に見られがちな様子をしていたが、実のところ殆ど該当していた。  そして注意深く見るならば、もちろん垢で薄汚れていただろうが、それ以外にも彼は、やけに皮膚がくすんでいた。それは一種病的な印象だった。
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